Unit B-1 一発で諦めない: 対話で育てる
対応コンピテンシー: B1, B2 | 所要時間の目安: 10分
なぜこのスキルが必要か
「生成AIを試してみたけど、ありきたりな答えしか返ってこなかった」— そう言って使うのをやめてしまう人は少なくありません。しかし、それは道具の限界ではなく使い方の問題であることがほとんどです。生成AIは、一度の指示で完璧な答えを出す自動販売機ではなく、対話しながら出力を育てていく壁打ち相手です。最初の出力をたたき台として、足りない情報を渡し、直してほしい点を伝える。この往復ができるかどうかで、得られる成果物の質は大きく変わります。
コアの解説
- 反復改善が基本: プロンプトは一度入れて終わりではありません。最初の出力は「たたき台」と考え、どこが物足りないかを具体的に伝えて改善を指示します。この往復を2〜3回繰り返すだけで、出力は見違えます。
- コンテキスト(背景情報)が出力を決める: 対象者・目的・時間・分量・形式などの背景情報や制約条件を伝えるほど、出力はあなたの現場に即したものになります。逆に何も伝えなければ、AIは「世界のどこでも通用する一般論」を返すしかありません。
- あとから足してよい: コンテキストは最初に完璧にそろえる必要はありません。出力を見て「そういえば時間は30分しかない」と気づいたら、その場で伝え直せばAIは作り直してくれます。
お題と体験の流れ
自分に近い職種のタブを選んでください(お題を自分の業務の題材に置き換えても構いません)。どの職種も流れは同じで、Step 1: あえて素っ気なく頼む → Step 2: コンテキストを足す → Step 3: 追加指示で磨く の3段階です。
題材: 研修医向け勉強会のカリキュラム作成
Step 1 — まず、あえてこれだけを送ります。
研修医向けの勉強会のカリキュラムを作ってください。
Step 2 — 出力を眺めて「一般論だな」と感じたら、コンテキストを足します。
先ほどの案を、次の条件に合わせて作り直してください。
- 対象: 初期研修医1〜2年目、約10名
- テーマ: 救急外来でよく出会う症候(胸痛、腹痛、めまいなど)への初期対応
- 時間: 週1回30分、全8回
- 到達目標: 各症候について、危険な疾患を除外する考え方を自分の言葉で説明できる
- 形式: 症例ベースで、参加者が発言する時間を毎回設ける
Step 3 — さらに追加指示で磨きます(例)。
第1回(胸痛)について、当日の進行表を分単位で作ってください。
各回の最後に使える、理解度確認の質問を1問ずつ追加してください。
題材: 新人向け手技説明資料の作成
Step 1 — まず、あえてこれだけを送ります。
新人看護師向けに、静脈採血の説明資料を作ってください。
Step 2 — 出力を眺めて「うちの研修では使えないな」と感じたら、コンテキストを足します。
先ほどの資料を、次の条件に合わせて作り直してください。
- 対象: 入職1年目の新人看護師
- 目的: 静脈採血の一連の流れと、安全確認のポイントを身につける
- 使用場面: 集合研修で配布する資料
- 分量: A4用紙2枚以内
- 形式: 手順のチェックリスト + 「よくある失敗と対処」の2部構成
Step 3 — さらに追加指示で磨きます(例)。
「よくある失敗と対処」を、現場の場面をイメージできる短い会話例つきにしてください。
チェックリストの各項目に、「なぜそれが必要か」の一言を添えてください。
題材: 患者向け服薬指導資料の作成
Step 1 — まず、あえてこれだけを送ります。
患者向けに、ワルファリンの服薬指導資料を作ってください。
Step 2 — 出力を眺めて「この患者さんには難しすぎるな」と感じたら、コンテキストを足します。
先ほどの資料を、次の条件に合わせて作り直してください。
- 対象: 高齢の患者さんとそのご家族
- 目的: 飲み忘れたときの対応と、注意が必要な食品・市販薬を理解してもらう
- 分量: A4用紙1枚
- 形式: 大きな文字での印刷を想定した箇条書き。専門用語を使わない
Step 3 — さらに追加指示で磨きます(例)。
見出しを質問の形にしてください(例:「飲み忘れたらどうする?」)。
「納豆はなぜだめなのか」を、患者さんの言葉づかいで2〜3行で説明する欄を追加してください。
題材: 患者向け自主トレーニング資料の作成
Step 1 — まず、あえてこれだけを送ります。
患者向けに、自主トレーニングの説明資料を作ってください。
Step 2 — 出力を眺めて「この患者さんには合わないな」と感じたら、コンテキストを足します。
先ほどの資料を、次の条件に合わせて作り直してください。
- 対象: 大腿骨近位部骨折の術後に自宅へ退院する高齢の患者さん
- 目的: 退院後も自宅で安全に筋力・バランスの運動を続けてもらう
- 分量: A4用紙1枚
- 形式: 運動ごとに「回数の目安・注意点・中止する目安」を添えた箇条書き。専門用語を使わない
Step 3 — さらに追加指示で磨きます(例)。
各運動に、転倒を防ぐための一言(手すりや椅子につかまって行う、など)を添えてください。
「痛みが出たときはどうする?」の欄を、患者さんの言葉づかいで2〜3行で追加してください。
手順
- 上のタブから自分に近い職種のお題を選びます。
- Step 1 のプロンプトをそのまま手元の生成AIに送り、出力を観察します。「間違ってはいないが、うちでは使えない」という感覚を確かめてください。
- Step 2 のプロンプトを続けて送り、出力がどれだけ具体的になったかを Step 1 と見比べます。
- Step 3 の追加指示(または自分で考えた指示)で、少なくとも2回は出力を磨きます。
- この対話履歴は消さずに残しておいてください。 このあとの領域Bの実践課題で、この対話をそのまま使います。
期待される出力の例
- Step 1 では、どの施設にも当てはまる総論的な項目の羅列が返ってきがちです(それ自体は誤りではありません)。
- Step 2 の後は、対象者のレベル・時間枠・形式が反映され、「そのまま現場で使えそう」な具体性に変わります。
- Step 3 の後は、進行表や会話例など、あなたが本当に必要としている粒度の成果物になります。
この「一般論 → 現場仕様」への変化を体感することが、このユニットのゴールです。
うまくいかない典型パターンと対処
- 「もっと良くして」と曖昧に頼んでしまう: AIは何を直せばよいか推測するしかありません。「どこが」「どう直してほしいか」をひとつずつ伝えましょう。
- 一度に条件を盛り込みすぎて、出力が長く散漫になる: 条件は段階的に足して構いません。まず骨格を固め、細部は追加指示で磨きます。
- 対話が長くなると、AIが最初の制約(時間・分量など)を忘れる: 「時間は30分以内という条件のままでお願いします」のように、重要な制約を再掲してください。
- 改善指示のたびに全体が書き換わり、気に入っていた部分まで変わる: 「他の部分は変えずに、◯◯だけ直してください」と範囲を限定します。
安全上の注意
患者情報・個人情報を入力しないでください
実在の患者に関する情報はもちろん、実在のスタッフや研修医の氏名も入力しないでください。お題はすべて架空の設定で成立します。また、職場の非公開情報(インシデント事例の詳細など)も入力しないでください。
自己チェッククイズ
このユニットの理解度を確認できます。合否の判定はなく、記録も保存されません。
成果物フィードバック(実践課題)
このユニットで行った対話は、そのまま領域Bの実践課題に使えます。対話の最後にフィードバックAIの採点プロンプトを送信して講評を受け、返ってきた講評を領域Bクイズページの提出欄に貼り付けてください(Unit B-2のお題で行っても構いません)。
次へ
Unit B-2「AIに質問させる・ダメ出しさせる」に進みましょう。すでに理解できている方は、領域Bクイズに直行しても構いません。